2019年08月20日

続・「子供の科学」から見たレトロPC

1年前、「子供の科学」のマイコン記事を取り上げました。
前回は図書館で1979年から1983年までの誌面を調べ、そこで時間切れになってしまいましたが、今回はその続きを報告したいと思います。

前回の記事のとおり、1983年5月号からは「SORDのM5を使ったパソコン入門教室」が始まりますが、同年8月号からはそれと並行して連載する形で「パソコンで暗号に挑戦」という連載が始まります。
こちらはBASICで暗号を解読する連載で、毎月読者に問題が出され、正解者には「日本コンピュータ設計のM5用ソフト」がプレゼントされます。
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ここにはツッコミどころが多々あり、
・「日本コンピュータ設計のM5用ソフト」が何なのか不明(ググった程度では全く情報なし)
・「パソコンで暗号に挑戦」はPC-8000をメインに据えているにもかかわらずプレゼントはM5用ソフト
・「SORDのM5を使ったパソコン入門教室」が終了して誌面からM5を扱う記事が消滅しても「日本コンピュータ設計のM5用ソフト」のプレゼントは延々と継続される
という有様で、頑張って暗号解読したP8ユーザーの読者はM5用のソフトが送られてきて困惑したのではないでしょうか。

「SORDのM5を使ったパソコン入門教室」は1年間で連載を終了し、1984年5月号からは代わって「パソコン手作り教室」というコーナーが始まります。
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こちらはオーソドックスなBASIC講座で、デジタル時計を表示するプログラムなどが掲載されています。
プログラムの掲載機種はPC-8001やFM-7など号によってコロコロ変わり、どうもライターの所有機種によって決まっているような印象です。
BASICプログラムの移植性は最大限考慮して作られて入るようですが、時刻関連などはどうしても機種依存になってしまうのは致し方ないところです。
1985年には「パソコンもぐらたたきゲーム」など、単発記事の体裁でBASICプログラムの掲載が継続されます。この年は通して同じライターが担当し、掲載されたのは全てFM-7用のプログラムでした。BASICプログラムの連載は1985年いっぱいで終了します。
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パソコン関連の連載記事が消えた後、1986年3月号に突如「ファミコンひろば」というコーナーがスタートします。ファミコン内部の仕組みなどの簡単な解説は入っていたりするものの、ゲームのレビューや読者投稿による感想など、読者コーナーの別館のような内容になっていて、子供の科学らしくないコーナーになっています。
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また、ジョイスティックのレビューがやたら充実しているなど、担当者の謎のこだわりが見られます。
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1987年になると「ファミコン&コンピュータひろば」とリニューアルし、完全に情報コーナーと化します。この体裁で少なくとも1988年の終わりまでは続いていることを確認しましたが、その後いつまで続いていたのかは確認できませんでした。(またも時間切れ)
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ちなみに、1983年以降の誌面で気になっていたMSXの扱いですが、調べた限りMSXを扱った記事はこの2回の情報記事のみです。実際にMSXを使って何かした記事は一度も掲載されませんでした。コペル21がずっとMSXを扱っていたのと対象的です。
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その他、いくつか見つかった小ネタを紹介したいと思います。
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「世界に広がるパソコンの輪」という題で国際的なネットワークがを取材したと思われる記事があるのですが、具体的に何を紹介しているのか記事を読んでも分かりません。ニューメディアという言葉があるので文脈的にINSなのかなとは思いますが。また、各国の言葉や文字に合わせて文字コードが制定されていることを説明している記述があるのですが、それでなぜ国際通信が成立するのか説明されていません。(筆者にも分かりません)
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科学技術館のパソコン移動教室が紹介されています。写真を見るとパソコンというより「くもんわんだあすくーる」と同一ハードではないかと思われます。この辺も今ネットで調べても情報が全くありません。

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マイコン以外の記事で言うと85年はつくば博、86年はハレー彗星の話題で持ちきりです。

その他、コンピュータや情報工学を扱った単発記事はいくつか掲載されていました。
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が、ここまで記事を追ってきて、全体的に知識や使い方を一方的にインプットしていくような記事構成で、コンピュータに触れることを通じて子供をクリエイティブにしようという意識が薄いように感じられました。読者投稿作品が載っていないこともそう感じる理由の一つでしょう。暗号解読コーナーも読者の回答を掲載してレビューするなどのやり方もあったのではないでしょうか。

そして80年代後半になっても紙面デザインの地味さや古臭さが抜けず、「勉強が好きな子供」向けの本という印象です。やはり子供の頃の自分が手に取ることはなかったと思います。
現在の誌面はもっと子供の興味に寄り添って、クリエイティビティを大事にする記事づくりがされていると感じています。これからの「子供の科学」を応援するとともに、その前になくならずに存続しててよかったと思います。



posted by eighttails at 18:00| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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