これまで、雑誌掲載作品レビューで取り上げてきた作品のうち、PiOの掲載作品は大半がソノシート収録作品でした。
ヤフオクでソノシート付きのPiOや、ソノシート単品で出品されていたのを落札してゲームをロード、プレイしていました。
筆者はP6しか持っていないので、他機種作品の収録箇所についてはこれまでスルーしてきたわけですが、この度手持ちのソノシート28枚56面を全てMP3化して通して聴いてみました。また国会図書館でソノシート関連記事を集めてきたので、そこから得られた情報をまとめておきたいと思います。
■ソノシートの構成
ここで、ソノシートのコンテンツの基本的な構成について触れておきたいと思います。
ソノシートはPiOの1985年1月号から休刊となる1986年10月号まで付属しており、毎号1枚ないし2枚のソノシートが添付されています。
内容は基本的にその号の掲載作品のプログラムが音声で収録されているわけですが、稀に読者のリクエストで過去の号(ソノシートが付属する前の1984年)の作品が収録されることがあります。
なぜカセットテープでなくソノシートなのかということについて、当時は業界の規制でカセットテープが雑誌の付録に付けられなかったからだと想像しますが、それを裏付ける記述を見つけられなかったので断定は避けます。
PiOのソノシートコンテンツにおける最大の特徴は、「ラジオ番組という体裁を取ることで、オープニングやプログラムの間にDJのトークが入り、曲紹介という形で収録作品を紹介する」ことです。
何かしらの目印がないとユーザーはどこからロードしたらいいのかわからないという問題があり説明が必要だったという事情があると思いますが、それをエンタメにしてしまったというのは斬新なアイデアだったと思います。
雑誌のテープサービスなどで多機種のプログラムが同時に収録されたものは多数存在していたと思いますが、他ではどういう構成になっていたのか私は把握できていません。
ソノシートの音声についてはネットにも上がってないようなので、オープニングトークの部分だけ紹介します。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
DJのナレーションは全て英語で、「パソコンDJギャル」と呼ばれる外国人女性たちが担当していました。
最も登場回数が多かったのはロクサーナという女性で、月によってスーザン、レイラ、カレン&クリスティンの二人組などのパーソナリティが数ヶ月ずつ登場していました。
殆どは家族が日本人か、日本への留学生という生い立ちで、どこから連れてきたのかは謎ですが、在日外国人を紹介するエージェントがいたのでしょう。
オープニングトークではなぜかS1に関する新機種、周辺機器、ソフト情報が紹介されるというのが通例でした。
ソノシートのレーベルを見てもS1だけ機種名がロゴマークで印刷されており、この謎のS1推しには日立との間に何らかの契約があった可能性があります。その割にS1作品を毎号収録するという縛りがあったわけではなさそうです。
工学社が運営するパソコン通信サービスTeleStarにS1CLUBというSIGがあったことと関係があるのかもしれません。
オープニングトークに続いて曲紹介の体で各収録差品を紹介していくパターンなのですが、月によっては
・読者からのお便りを読む回
・空港からサンフランシスコへロケに行くという体裁の番組
・当時劇場公開された映画「ネバーエンディングストーリー」のワンシーンを流して紹介
など、短い時間の中で様々な趣向が盛り込まれていました。
収録される作品の傾向ですが、S1作品は収録がある月は必ず最初に収録されます。
P6作品は収録率がおそらく最も高く、ソノシートが付いた22号中18号に収録されています。その次にX1、S1、FM-7、PC-8801が続く形です。
PC-8001はボーレートが低いためかメジャーな割に収録が少ないです。逆にX1はボーレートが高く短時間に収まるため、ソノシートの最後の方に滑り込むような形でよく収録されています。MZシリーズは本誌への掲載数が多い割にソノシートにはほとんど収録されていません。
その他、稀にポケコンやJR-100、SMC-777などのマイナー機種作品が収録されることがありました。手元で確認できる限りではMSX作品は収録されていません。(そもそもPiOにMSX作品は数回しか掲載されていない)
ソノシートの収録時間は片面で約4分半で、S1作品は冒頭のトークに圧迫されてA面に入り切らず一部のリストがB面に分けて収録されることがしばしばありました。
■本誌の構成
また、本誌の方ではソノシートの使い方、ナレーションの対訳が掲載されていました。
ソノシートが付録となった初期の記事によると、ソノシートを付録にするのは初めてではなく、I/O誌では1977年にワンボードマイコン向けのプログラムをソノシートに収録して付録としていたそうです。ただし77年当時のボーレートは110〜300bps程度で、85年時点での主流である600〜1200ボーで上手くロードできるかわからないので、上手く行った場合はそのやり方について読者からのレポートを待つという内容でした。
この読者からのレポートが後の号になって「パソコンDJ大成功!」というコーナーになります。
「パソコンDJ大成功!」では、ユーザーのソノシートからのロード体験談が掲載されており、以下のような様々なテクニックが投稿されていました。
一般的なテクニックとしては、
・PiOを買ったその日に切り取ってロードする。
・プレーヤーで再生時にはソノシートの下にLPを敷いて平らにする。
・ホコリは事前に取っておく。
手が込んだところだと
・レコード針をモノラルのものに替える。
・ソノシートの保管には写真用のアルバムを使う・
効果が怪しそうなところでは
・中性洗剤で静電気を取る。
・カセットテープに録音した後さらにもう一度ダビングをする。
・針の上に1円玉を置いて安定させる。
などなど。
また、最適な録音レベル、使用するテープの銘柄、タイプ(ハイポジ、メタル等)、ラインを使うかヘッドホン端子を使うかと言った各種環境条件については、使用している機種や機材によって最適解が異なるようで、言ってることが皆バラバラで統一見解には至らないようでした。
ちなみに私は今ではレコードプレーヤーからライン入力でICレコーダーに録音し、そこからUSBケーブルでPCに落とした後、soxやAudacityなどのツールでノーマライズ、波形編集をしてテープイメージに変換しています(実機でのロードが必要な場合はテープイメージにしてからP6DatRecでWAVに再変換しています)。現代であればこういったデジタルツールの恩恵を受けられますが、こうしたものがなかった当時は不確定要素が多すぎて半ばオカルトに走るのもむべなるかなという気がします。
ちなみにこのコーナーでも、ソノシートのミシン目が切り取りにくく、失敗するとデータが入っている盤面まで割れてしまうということがよく指摘されており、これを受けて86年4月号からはソノシートが丸くなって袋とじになりました。
■その他の小ネタ
・ソノシートに最初に収録された作品は1985年1月号のPC-6001用「ミラクル・ワールド」、最後の収録作品は1986年10月号のPC-1350用「99GAME」でした。
・ソノシートでも「AV」と呼ばれてしまう「アーマード・ビークル」
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
・ソノシートをMP3に取り込んでいる間、子供たちが乱入してきて、何をしているのか、当時はどうやってゲームを遊んでいたのか説明するのが大変でした。
・手持ち分のソノシート音声は合計3時間55分。ええ全部通して聞きましたとも。
■まとめ
PiOにソノシートが付録として付いていたというのはよく知られる話ですが、実際の中身についてはネット上にあまり情報がなく、また直接購読していた人以外にはその構成などもあまり知られていないということが分かったので、何らかの形で情報を残しておこうと思った次第です。
現在手持ちのソノシートは28枚56面、これでもコンプにはまだ数ヶ月分を残しているわけですが、最近はソノシート単品でもかなり高騰していることと、Program List OCRができてからは、レコードプレーヤーを引っ張り出すよりスキャン済みの誌面からOCRで読み取ったほうが早くなってしまったので、ソノシートのコンプへの興味はなくなってしまいました。
マイコンプログラムのカセットテープサービスは他誌でも行われていましたが、それをDJのトーク番組というエンタメにしたという、この時代でしか成立し得なかったメディアを作ったいう意味でPiOのソノシートはPCの歴史の中でもオンリーワンな存在だと思います。
このテープログインもPioのソノシートと同じように案内役のトークが収録されていました。憶えているのは、鶴ひろみ、島津冴子、富永みーなといった当時の若手声優です。
https://img.aucfree.com/d367943769.2.jpg
パッケージ裏では担当の女性声優の紹介もありました。この号は原えりこだったようです。
↓によると、テープログインは1984年から1987年まで出ていたとのことです。
http://fm-7.com/museum/softhouse/tapelogin/9102.html
情報ありがとうございます。
テープログインは一時ヤフオクで狙っていたこともあったのですが、結局入手できず確認ができないでいました。
女性声優のナレーションが収録されていたんですね。
鶴ひろみ、島津冴子、富永みーなって、今となってはお宝ですね。高騰する理由の一つかもしれません、
PiO何冊か買ったらソノシート4枚ぐらい入手できました。レコードプレイヤーは持ってないので、1万円ぐらいのアマゾンで売っているレコードプレイヤーを買おうかなと思ってます。あと、適当なLP買ってソノシートの下敷きにしようかなと思ってます。セロテープでLPに張り付ける等考えてます。すでに30年前のものですのでダメもとと思ってますが、なにかアドバイスいただければ嬉しいです。貴殿のおっしゃる通りネットにも情報無いですね。
>PiO何冊か買ったらソノシート4枚ぐらい入手できました。レコードプレイヤーは持ってないので、1万円ぐらいのアマゾンで売っているレコードプレイヤーを買おうかなと思ってます。
この記事の写真に写ってるプレーヤーはディスカウントストアで1万円くらいで買ったものですが、これが良くなくて、回転数の精度が悪いためか全く読み込めませんでした。
実際に吸い出しに使ったのは、その後ハードオフで1500円くらいのジャンクで購入したパイオニアのLPプレーヤーで、そこからライン入力でICレコーダーに録音していました。古くてもちゃんとしたメーカーのもののほうが良いかもしれません。
現在はPC上でノイズ除去や編集などができますので、私はAudacityを使ってノーマライズや切り出しなどを行っていました。
適当なLPを下敷きにするのは良いと思います。私が使ったのはディスクユニオンで仕入れてきたYMOのライディーンのEPでした。
奇しくも今日高橋幸宏さんの訃報に触れました。ご冥福をお祈りします。
回答ありがとうございます。
私audio全然知識ないのですが、sonyとかオーディオテクニカ聞いたことがあるメーカーがいいのでしょうか?レコードブームらしくプレイヤーは結構売ってますね。調べたらレンタルとかもあるのですね。少し検討してみます。あとPiO見てたら、ソノシートを重ねると静電気でくっ付いて剛性が上がるといいとかありますね。
プレイヤー GP-N3R(太知ホールディングス)
ソフト SOUND ENGINE,DUMP LIST EDITOR
96000Hz,16BIT、チャンネル1
プレイヤーは、ソノシートは普通のレコードより溝が中心近くまであるものがあり、アーム移動のオートの機構があると再生できないものがあるとのことで手動式のこれを使いました。あとLPレコードを下敷きに。色々アドバイスありがとうございました。ご報告までに。