雑誌掲載作品レビュー(48)「MYSTERY ROOM」

今回のお題はマイコンBASICマガジン1986年3月号掲載の「MYSTERY ROOM」です。
内容は、今で言う脱出ゲーム系のアドベンチャーゲームです。

ゲームは1つの部屋の中で完結し、ゲームの目的もこの部屋から脱出することです。

「いどう」コマンドによって4つの画面の間を行き来します。特に東西南北など言及はないのですが、部屋の4方向の壁に対応していると考えて差し支えないでしょう。

コマンドは「あける」「うごかす」など9つとなっており、一見選択式のようですがコマンド入力型です。
まず動詞を入力し、次に動詞の対象の目的語をひらかなで入力します。

コマンドの動詞の方はファンクションキーで入力できるようになっており、操作系としてはポートピア連続殺人事件に近いかもしれません。

BASICで150ステップほどのリストなので解法自体はそれほど複雑な物ではありません。
単語もリスト内に平文で書かれているので、打ち込んだ本人であれば単語探しで悩むことはないでしょう。
ただし、ところどころに思わせぶりでいて無関係な謎がちりばめられていて、ボリュームの割にプレーヤーを悩ませる作りになっています。

筆者には「頭の絵」とそれが投げかけてくる問いの意味がいまだに分からないのですが、クリアには全く関係ないです。

動画を撮りましたのでこちらもご覧ください。

ここからはちょっと投稿者の古傷に触れるような話になってしまうのですが、もう時効なので言及しておこうかと思います。

この時期のベーマガでは通巻50号記念キャンペーンという事で、メーカー各社協賛の元、「ベストプログラマー」を読者投票で決めるという企画が行われていましたが、後日発表された本作の得票数の欄には「無効」と表記されていました。

本作はどうも他誌掲載作品の勝手移植だったようです。
オリジナルはRAM1984年2月号掲載のFM-7用のものと思われます。(参考)

掲載誌は手元にないのですが、当時たまたま目にしてあれっと思った記憶があります。

RAMは1984年9月号で休刊しており、移植した時点の1986年にはすでにしかるべき投稿先が存在しないという状況で、どうしたら発表できるかと考えた結果ベーマガに投稿したという行動自体は個人的には一概には責められないかなと思います。
投稿者の落ち度は「出典を明示しなかった」という一点に尽きると思います。出典さえ分かっていれば編集部も対応のしようがあったのではないでしょうか。(もちろん普通に没の可能性もありますが)

通常こうしたケースでは編集部からの謝罪文と投稿者への注意喚起が掲載されるものなのですが、この件については特に経緯説明等も見つからず、ベストプログラマーの得票だけが無効とされているようでした。
ちなみに、翌年発行された「PC-6001・6601プログラム大全集」には普通に収録されています。

(2021/7/26追記)オリジナルの掲載誌を閲覧する機会があり確認してみたところ、大筋は同じですが細かいところにいくつか違いがみられます。

・オリジナルはコマンド動詞、目的語ともに英語入力であるが、P6版は動詞はファンクションキー入力、目的語はかな入力となっている。

・家具の配置が若干違う(オリジナルの暖炉が戸棚になっていたり、オリジナルにないテレビがあったりする)。

・プログラムはオリジナルの方が1.5倍ほど長いが、中間色を出すためCONNECT文で1ラインおきに線を引いているため。

・本文で言及したクリアに直接関係ない謎はオリジナル版にはなく、P6版のアレンジで入ったもの。

一部メッセージの難読化はされていますがそこまで複雑ではないので、プログラムを読み解く能力と紙面に掲載された画面のスクリーンショットがあればオリジナルを実機でプレイしていなくても他機種で再現は可能だと思われます。(投稿者がオリジナルをプレイしていたかどうかは分かりません。)