お題は「かもめのジョナサン 完成版」(リチャード・バック著、五木寛之創訳、新潮社刊)です。
■あらまし
この本のオリジナルは、1970年に三章構成の小説として発表されました。
餌を取り、生きるための手段として飛んでいるかもめの群れの中でただ一羽、純粋に飛行技術の追求に意義を見出し、群れから異端として追放されながらも新しい世界で生きていく、かもめのジョナサンの物語です。
本来この物語は四章構成だったらしいのですが、作者の意向で第四章をカットして刊行されていました。この度刊行された「完成版」は、40年を経て作者の心境の変化によって公開された第四章を収録したものです。
今回ブログでこの本を取り上げたのは、1983年に発売されたNECのパソコンPC-6001mk2およびPC-6601のパッケージやマニュアルのデザインにこの「かもめのジョナサン」がモチーフとして使われており、P6ユーザーゆかりの小説であるからです。
ちなみに現役P6ユーザーの間には、オフ会などでファミレスにたむろする際には「ジョナサン」を使うという掟があります。
原作者のリチャード・バックは元米空軍のパイロットで、この作品も飛行中の心象風景から生まれたものでしょうし、最初に刊行された1970年にはパーソナルコンピュータと呼ばれる製品は存在していなかったわけで、作者の意識の中にコンピューターは全くなかったと思われますが、新たに発表されたエピソードも含めて、コンピュータの歴史と重ねてみると奇妙な類似性が見られます。
というより、テクノロジーとそれを扱う技能についてのメッセージと解釈すると、高い普遍性があるように思えました。
私自身この本を読むのは初めてなのですが、今回はコンピュータの視点から「かもめのジョナサン」が発していたメッセージを私なりに解釈してみたいと思います。
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